第3回 育児を支援する働き方改革と職場の理解

多様な人材が活躍するためには、組織全体で意識改革を行い、サポートとしていくことが必要となってきます。
上司(イクボス)が、職場でともに働く部下に対して仕事と生活を両立しやすい職場環境づくりを行い、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむ。
そうしたイクボスが増えれば、組織だけではなく、社会全体も変わっていくのではないでしょうか。そこで今回は、ダイバーシティ推進委員長でもあります関 良明 副学長より寄稿いただきました。

副学長(キャンパス連携担当)の関良明です。ダイバーシティ推進委員会委員長も拝命していますので、職場における育児環境の雑感を述べさせていただきます。私は1985年に民営化初年度の日本電信電話株式会社(NTT)に入社しました。最初の10年は大学の研究者と同じような仕事でしたが、30代からの20年は研究開発のプロジェクトマネージャーを補佐する仕事が続きました。副学長の仕事もそれに近い感じかもしれません。そこで多くの社員と接しながら経験してきたNTTグループの育児支援を紹介し、考え方を整理してみたいと思います。

NTTグループは、職場全体でワーク・ライフ・マネジメントに対する理解を深め、社員一人ひとりの多様な働き方を受容する環境づくりを進めています。働き方として、シフト勤務、フレックスタイム制、裁量労働制、在宅勤務があり、休暇制度は年次有給休暇、年休休暇積み立て型のライフプラン休暇、育児時間の特別休暇などがありました。支援制度として、出産・育児支援、介護支援があり、育児支援関連に以下のような制度がありました。

・子が満3歳までの必要期間に休職できる育児休職(無給)
・小学校3年生以下の子の育児のための短時間勤務(勤務時間に応じ支給)
・育児事由の退職後3年以内に選考の上、再雇用

かつてNTTは電話交換機が勝手に稼いでくれる裕福な会社であり、組織の仕組みや福利厚生、各種支援制度は先進的でした。また、このような制度は、社員の代替が容易な会社組織の特長と考えられます。

大学教授として転職して、8年目になります。学生と教職員から構成される大学は、会社組織と異なる特殊な職場環境と思っています。教員は学科という商店街に店を構える個人商店主のようなもので、会社組織とは異なり、組織内の人事評価は自発的で学部長などは選挙で任命されます。職員は個々に独立した学生と多様な価値観を持つ教員を支える組織の一員として勤務しています。このような独立性と自由度が高い一方で、計画的な行事の遂行が要求される職場では、お互いの多様な働き方に気付き(Awareness)、それを受容することが重要と考えています。

特に育児に関わる職場での支援は、長い期間に渡り、突発的な対応も必要であることから、より一層の理解と助け合いが、豊かな働き方を育んでいくと思います。皆さまのダイバーシティ推進に向けた活動へのご協力をよろしくお願いいたします。

参考文献:

NTTグループのダイバーシティ&インクルージョン/制度・仕組み
https://group.ntt/jp/diversity/system.html